解説 |
エビネの仲間には温帯性種と熱帯性種があり、夏に開花するエビネの多くは熱帯性種です。ツルラン(Calanthe triplicata)に代表されるのが「熱帯性常緑カランセ」と呼ばれる種類で、これらはアジアの熱帯多雨林を中心に自生し、日本は分布の北限です。生育に適した気温にあれば成長を続け、不定期に開花します。日本では夏が生育適温になるため、夏に開花します。3~6枚出る幅広の葉のわきから長い花茎を伸ばし、先端付近に多数の花を密集して咲かせます。長い距(花の後ろにある突き出した部分)がある種が多いのも特徴です。ツルラン、オナガエビネ(C. masuca)を中心に交配され、つくられた交配種が「リュウキュウエビネ」の名で流通しています。たいへん丈夫で、冬の温度管理さえ適切であれば毎年開花し、株もふえて豪華な夏の一鉢となります。
本来のリュウキュウエビネ(C. okinawensis)は沖縄本島や奄美大島の森林に特産する希少種で、これら交配種とは別ものです。わが国の九州、屋久島・種子島から沖縄、台湾に分布しています。地生ランで、夏咲きの「えびね(海老根)」です。7月から9月ごろ、長さ40~80センチの花茎を伸ばして、先端の総状花序に花を咲かせます。花の色は純白色からピンク色、紅色、濃い紫色などと変化に富んでいます。地下に偽球茎をもちます。葉は数個出て、先がとがる長楕円形となり、縦にしわがあります。冬越しには10℃を下回らないようにします。強い風を避けた半日陰~日陰で管理し、地植えの場合は常緑樹の下に植えこむのがよいです。 |